国立科学研究所(CNRS、Centre National de la Recherche Scientifique)研究員。
1983年から嗅覚について研究を行う。特に、電気生理学を用いた手法に精通している。サンショウウオの嗅覚情報を探知するニューロン細胞間の電気信号の測定に成功し、彼は、匂い分子による細胞の活性化の生理学的メカニズムの解明において先駆者となった。また、彼は、1986年、初めてパッチクランプ法を細胞レベルの測定に用い、そのメカニズムの解明に貢献した。
1990年代では鋤鼻器(じょびき、vomeronasal organ)の解明に取り組んだ。この器官は動物のフェロモン探知に不可欠な器官として知られ、当時は、どの細胞が関連しているのかなど情報が不明であった。中でも、オスロ大学のKjell Døvingとの共同研究で、リュドヴェィグ・ヤコブソン(Ludvig Jacobson)のデンマークのゴシック様式で書かれた1813年の原稿の英語訳に取り組み、このヤコブソンの他に類を見ない業績を世に広めた。
2000年には、人間において鋤鼻器が機能していないことを明らかにした。その後、彼は、人間の嗅覚情報を受容体へ受け渡す際の鍵となる、鼻の上皮細胞を覆う粘液の組成について研究を行った。これらの研究は様々な共同研究を通して実現された。近年は、味覚の分子生物学的メカニズムを解明する研究にも着手している。
また、同様に、近年、ラ・フォンダション・ド・ラヴニール(la Fondation de l'Avenir:応用医療研究を支援する基金)とラ・フォンダション・デ・ギョル・カッセ(la Fondation des Gueules Cassees:顔面挫傷者を支援する基金)からの支援により、パリのラリーボワジエ病院(l'hôpital Lariboisière)の耳鼻咽喉科内に嗅覚障害を検査するのに適した脳波検査のシステムを構築し、設置した。
彼は、同時に世間に研究成果を伝達する機会にも重きを置いていて、ラジオ、テレビ、展覧会、科学居酒屋、オープン・ラボ、一般向けの雑誌など様々な場に登場する。また、仕事上(学会・研究会への招待、共同研究など。プログラム・ヒューマン・フロンティア(Programme Human Frontier)、筑波大学、東京大学、京都大学に滞在)やプライベートで何度も日本に滞在している。この滞在の際、芸術、物、環境などに関連した文化や考え方の違いを認識した。彼の経験は、このプロジェクトで有用なものだと思われる。