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この研究は嗅覚に関連した人類学と香りの美学の視点を取り込みながら、哲学的なアプローチにより行われます。香道から与えられたモデルを検証しつつ、その特徴を理解すること、及び、嗅覚に重きを置いていない西洋芸術に新たな構想を与えられる芸術のイメージを素描することを目的としています。
1)日本の芳香の芸術を解析し、その特徴を説明します。
ここでは、この他に類を見ない芸術が成立した際の文化・社会的条件を明るみに出すことを目標とします。
その際、歴史的、社会的、政治的理由だけでなく、華麗さと非永続性を兼ね備えた、この目に見えない美、はかなさの美を基盤とする倫理的・宗教的動機をも考慮する予定です。香道が生まれる際の仏教の禅宗の役割、この芸術の変遷、そして、19 世紀までの日本の鎖国した状況にも着目します。
2)香道のどの尺度が現代的嗅覚の美を考える上での範例になるかを検証します。
様々な交流や美的影響を通しながら、香道の日本文化における根付き具合をしっかり理解し、文化の多様性や、フランス文化への受け入れられやすさを考慮に入れて、どの様にしたら、日本の芸術が西洋の現代芸術に潤いを与えることできるのかを明らかにしたいと考えています。この点においては、京都に生まれ、日本から海外に出て、現在スウェーデンにおいて活躍している彫刻家、小山泰史(おやま ひろし)氏の存在にも注目しています。彼は、母国の芳香の芸術に影響を受け、作品の一部に香を用いる、いわば嗅覚を必要とする彫刻を創り出しているからです。